リアンドリア・ジョンソン

リアンドリア・ジョンソン

リアンドリア・ジョンソンは「SundayBest」というテレビ番組がきっかけで全米で名前が知られるようになりました。「SundayBest」は、新人ボーカリスト発掘番組として有名になった「アメリカン・アイドル」のゴスペル・バージョンというところでしょうか。2010年にこの番組に出演し、優勝。そして翌年には「The Awakening of Le’Andria Johnson 」というタイトルでCDデビュー。このアルバムの中の1曲「Jesus」が2012年のグラミー賞を獲得します。

私は実を言うと、この番組の2014年のオーディションに行ったことがあります。NobのPure Soul Music(アメリカのレコードレーベル)でのCDデビューが決まり、そのPRに繋がれば良いなという考えで行ったのですが・・・。

甘かった!これがアマチュアのオーディション?レベルが信じられないほど高くて驚きました!アメリカン・アイドルなんて比較になりません!確か朝の6時頃にオーディション会場にいった記憶があるのですが、すでに400~500人ぐらいはいたのかな~。長~い行列ができていました!アメリカでプロ・ボーカリストとして生きることが、いかに難しいかを見せつけられた1日でした。

Nob@SundayBestオーディション。早朝に行ったのにゼッケンは4000番!

そんなハイレベルの戦いをくぐりぬけて優勝した彼女の実力は、疑いの余地もありません!そして、彼女のシンデレラ・ストーリーも追い風となり、人気は急上昇。彼女は離婚を2度経験。そして3児を育てるシングル・マザーでした。オーディションの映像中のインタビューでも「数日前に家を無くしたばかり」と話しており、ジャッジの前でスリッパのようなものを履いて登場しています。ドニー・マクラーキンさんに「本当に歌いに来たの?」と聞かれたほど、とてもテレビのオーディションに来るような姿ではありませんでした。

全くその時はシンガーとして生計をたてるつもりはなかったのだそうです。オーディションに来たのも友人が強く勧めたからだとか。お父さんが牧師だったので、小さいころからゴスペルは聞いていただろうし、もちろん歌っていたことでしょう。慣れ親しんだゴスペルなら・・・ということだったのでしょうか。しかし、彼女が軽い気持ちでオーディションを受けていたとは私は思いません。なぜなら、あのオーディションは、とても過酷だからです。

Nobも必死に頑張って最終審査まで残りました。だから終わったのは夜9時ごろだったかなあ~。まさか、そんなに長くかかると思いませんでした。テレビ局が軽食を用意してくれたものの、それ以外は口にすることはできません。お腹は空くし、喉はカラカラだし。歌わない私ですら辛かったのですから、オーディションを受けていた人たちは本当に大変だったと思います。会場いっぱいだった人達がドンドン減っていき、付き添いに来た家族や友人も会場から出るように指示されました。最終審査に残った人たちが一人一人、ジャッジの前で歌い、それ自体がテレビ収録となるからです。

Sunday Bestのテレビ収録会場。最終審査に残ったシンガーたちの収録準備中。

最終審査に残った人たちは、もうみんなプロレベル。誰が残ってもおかしくありません。「ここまで来たのだから残りたい」と全員が思いながらも、体力も気力も限界に来ています。私たちは会場近くのホテルに前日入りして臨みましたが、多くの人は「一晩中運転して会場まで来た」とか「車の中で仮眠した」とかいう状況。その中で全力で歌わなくてはならないのですから、軽い気持ちで来た人がパスするわけはありません。一日中、ほぼ飲まず食わずで緊張状態が続くのです。正直、私は「もう、どうでもいいから帰りたい・・」と思っていました。あの番組オーディションは、私欲を忘れて真の信仰があるのかどうかを試されるものだと思います。

その後もジョンソンさんは沢山の賞を受賞します。大きなコンサートや授賞式への出演依頼も多数あり、有名ゴスペル・アーティストのマービン・サップのヒット曲「Never Would Have Made It 」を歌った映像は、多くのゴスペル音楽ファンをわしづかみにしました。彼女の人気の秘密は歌だけではありません。彼女の生き方そのものが大きく評価されました。音楽で得たお金を使って教会を作り、牧師としての活動を始めます。私も彼女がとてもラフな格好で町へ出て、若い黒人の男の子たちに伝道している姿を映像で見たことがあります。タバコを持って「良かったら一本吸わない?」と気軽に話しかけ、一緒にタバコを吸いながら、友達のように会話を始めます。そして「私もあなたたちと同じで、神様に見放されていたと思ってたよ。でも、どうもそうじゃないらしいの。見放しているのは、私達のほうみたい。それを神様は私を使って証明してくれたの。興味があるなら、一度私の教会に来てみて!」

ジョンソンさんがアトランタで始めた教会礼拝の案内。

女性が牧師として教会を始めるのは、容易いことではありません。教会牧師の多くは男性だからです。彼女はそういった保守的なクリスチャン・コミュニティを変えたいという思いが強かったようです。日曜礼拝も土曜の夜遅くまで遊んでいた若い子が来やすいように、夕方から始めるなど改革を行おうとしました。

神様は人間を愛し、いつも守ってくださっています。しかし、私達は良いことがあると「ラッキー!」と言いながら浮かれて、そこに神様への感謝の言葉はありません。何もかも失い、心の底から「神様!」と名を呼んだ彼女だからこそ、神様は奇跡を起こしたのだと思います。そして生まれ変わった彼女は神の力を確信し、音楽と自分の体験を通して神の栄光のために生きようと決意できたのかもしれません。

さて、人生が順風満帆に見えるとき、必ずやってくるのがサタンです。悪魔の誘惑が必ず人間を試しにやってきます。聖書に登場するイエスにですら、悪魔は誘惑しています。良いことをしようとすると、必ず悪魔の誘惑がやってくるのです。2015年、彼女もその悪魔のターゲットとなりました。飲酒し酔った状態で暴言を口にする動画が公開されました。動画はネット上で拡散され、多くのクリスチャンメディアが「彼女はクリスチャン・リーダーとして未熟だ」という内容を報じました。彼女が改革を起こそうとしていたクリスチャン宣教の方向性は、私は決して悪いとは思っていませんでした。神様の愛を知らない若者に宣教することは素晴らしいと思いましたし、彼らの声を聞こうとする彼女の姿勢も評価していました。ですが、やはりあの動画を見れば、彼女の弁護は難しい。とてもショックでした。そして、誰もが「彼女はこれで終わった」と思いました。

ゴスペルフェストチラシ(3月1日現在)

が、昨年は新曲「All I Got 」のミュージックビデオを公開。そして今年2018年2月、ニューヨークで行われたグラミー賞のレッドカーペットに登場。また、マクドナルド・ゴスペルフェストのゲストとしても起用されるとのこと。神に選ばれたシンデレラ・ガールの復活はあるのでしょうか?きっと彼女にとっても再起をかけた重要なステージになるはず。今回の出演が彼女の再スタートとなれるよう祈り、そして今年のゴスペルフェストの観客がその証人となれることを楽しみにしたいと思います。

 

2018年3月3日

文:打木希瑶子